「TOKYO ZERO」から見えてきた、人が犬のためにできること

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「TOKYO ZERO ~すべてのペットが幸せになれる東京へ」

環境省が発表した2020年殺処分ゼロに向け、東京を動物福祉先進都市とするための「TOKYO ZERO キャンペーン」が2014年4月27日立ち上がりました。

「TOKYO ZERO」は、以下の3つの解決策を掲げています。
1) ペット産業適正化のために「8週齢規制」を早期実施
2) 捨てられた犬や猫の福祉向上のための「ティアハイム」の設立
3) 「保護犬」「保護猫」との出会いを広める

そして9月28日、動物行動学や動物福祉学の分野において世界の第一人者である、米ペンシルベニア大学獣医学部の、「ジェームス・サーペル教授による公開セミナー」が開催されました。

 

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犬の問題行動に役立つ標準化された測定方法がこれまでに無かったことから、サーペル教授は2~3万件の飼い犬のアンケート結果をデータベース化し、使役犬・獣医・収容施設などで広く使われるよう犬の行動解析システム「C-BARQ」を開発しました。

このデータベースから、見えてきたこと。

 

■問題行動が多い犬種は?

30種の犬種の中で、攻撃性・恐怖心が強い犬種は、ダックスフント、ミニチュアダックス、チワワが上位に。 逆に攻撃性・恐怖心が低い犬種は、シベリアンハスキー、ゴールデンレトリバーなど。 訓練(しつけ)のし易さは使役犬である、オーストラリアンシェパード、ロットワイラー、シェットランドシープドッグ。 逆は、ビーグル、ミニチュアダックス、パグ、ヨークシャテリア。

つまり、大型犬ほど温和でしつけがし易く、愛玩犬ほど問題行動が多い上にしつけが難しいということがわかります。

 

■問題行動の原因とは?

子犬の幼少期の子育環境が成犬時の問題行動にどれだけ影響するかにについて、知識のある方はそう多くないと思います。

目が開く2週目・耳が聞こえる3週目を過ぎ、4~12週目を社会化期と呼び、その時期の環境が成犬時の行動に直結します。

8週目までは脳細胞が発達している時期なので、それ以前に生まれた環境から引き離さない方がよいこと。 また、4~6週目で飼われた犬が、問題行動を最も多く引き起こしているというデータが出ています。

 

■ペットショップでの購入が原因?

犬の購入先を、ペットショップ(パピーミル)・ブリーダー・シェルター・友人・保護施設に分別し、攻撃性・むだ吠え・留守番時の粗相などの問題行動を調査したところ、ペットショップからの購入が圧倒的に上位に。

これらの結果から、可愛い盛りに衝動買いを促すペットショップが、幼少期に母親から引き離した子犬を販売していることが原因であるというストーリーが見えてきます。 そして、犬の問題行動を理由に飼育放棄する人が後を絶たず、年間約4万頭が行政により殺処分されているのです。

8週目以前の愛玩犬をペットショップから購入することは、大きなリスクなのです。 

 

■ ペット流通の闇とは?

ではなぜ、8週目以前の子犬がペットショップで販売されているのでしょうか?

欧米先進国ではペットショップという生体販売業者はほとんど存在しませんし、8週齢規制されている国も少なくありません。

現在の日本の法律では6.5週齢で、動物愛護法改正により2年後には7週齢になることは確定しています。 しかし、8週齢にするかは環境省が行う研究結果によって確定することになっており、来年の1月から年間3,000人を対象に調査を開始し5年間続けるという。 調査が完了するのが6年後ということは、次の愛護法改正でも8週齢規制は盛り込まれないということです。

なぜ5年間の調査が必要なのか、なぜ「C-BARQ」データを利用しないのか、なぜ調査対象の犬を環境省が選定するのか、についてはその場に環境省の方が居なかったのではっきりしていません。

これ、「8週齢規制」させないペット流通の闇によって操られていませんか?

 

■私たちができることとは?

国が決めたことなので、これを覆していくことは難しいでしょう。

しかし、ペットショップから、8週目以前に生まれた環境から引き離された子犬を購入しなければ良いのです。 もちろん、売れ残った子犬たちが、ペットショップにより殺処分されることは目に見えていますが、それは今も同じです。

問題行動が原因で飼育放棄する数を減らす策はいろいろありますが、まずは8週目以前の子犬が大量に販売されている蛇口を閉めることが第一ではないでしょうか?

8週目以前の子犬が売れなければ、ペットショップも商売ですから早すぎる時期に店頭に陳列することは無くなるでしょう。

国が変わらないのであれば、私たちが行動を変えることで、殺処分の数を減らすことは可能です。

 

■犬の減少問題とは?

ヒトは犬と交流することで何かしら身体にいい影響があるということは聞いたことがあるかと思います。 麻布大学獣医学部の太田光明教授から、犬の減少問題について説明がありました。

飼い主と犬の相互コミュニケーションにより、「オキシトシン」(別名ハッピーホルモン)・ドーパミンがお互いに上昇することや、犬の散歩中にリラックスするための副交換神経の働きが上昇することが科学的に証明されており、犬を飼っている高齢者は低ストレスにより、非飼い主と比べ年間に1.75回も通院が減っているとことが実証されています。

しかし、日本における犬の飼育数は減少しており、近い将来に犬の数は半分に減ろうとしているとのこと。 犬と一緒に暮らすことで恩恵を最も受ける高齢者は、自分の余命と犬の平均寿命を比較しなかなか飼うことができないのが現状ですが、今後は高齢者が犬と暮らせる仕組みづくりが必要になってきます。

 

「多くのヒトが犬とともに、生涯幸せに暮らす。」

簡単そうですが問題は山積みです。 しかしヒトの意識を少し変えるだけで実はとても簡単なことなのかもしれません。 犬はオオカミから家畜化された15,000年前から何も変わりません。 どんな時も精一杯ヒトを信じ愛してくれています。 人間のわたしたちが犬のために出来ることを、始めるべき時がきているのではないでしょうか。

 

 

太田匤彦さんの著書、「犬を殺すのは誰か ペット流通の闇」は、犬猫好きには知っておいて欲しい内容が書かれた良本です。

 

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